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おつかれマット

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  そのむかし、多摩美術大学には広告研究会という部活があって ( いまもあるか ) 、うちの学科の生徒は大体入っている、昔からある由緒正しい部活だという決まり文句に誘われ、当たり前に入部した。 何をどう活動するのかいまいちわからないまま二年生になり、当時の部長が知り合いだったため、部長にならないかと誘われた。なんか偉そうでかっこいい感じがすると思い、気の小さい自分は部長になった。 部長はとってもめんどくさい、毎週木曜日の謎の集会に行き、誰のためでもなく怒られたり、掃除をやんわり断ったり、変な頼みごとされたり、とんでもない田舎で合宿をしたり、ここではかけないような大学生らしい火祭りをかわしたり、部費のために一生懸命レシートを集めたりした。 ( 先輩が引っ越した時の家具のレシートが役に立った。 ) 部長としてはめんどくさいという理由でいくつかのイベントをなきものにした。特に文句を言う先輩も後輩もいなかった。 しかし広告研究会というのはその数少ないいくつかのイベントで成り立っているので、実態のないこの部活は生命力を失い、部活として部室を持つ意味もなくなり、最終的に年の終わりに虫部という謎の部活に部室を明け渡すことになった。 ( よりによって虫部! ) それで部長の最後の大仕事は、部室を片付けることだった。まったくそういう時にだけ、何か盗んでやろうと目を光らせてやってくるそれこそ虫のような人たちもいて、ギターやらゲームやらが持って行かれたらしく 最初は腹が立っていたけどしばらくするとどうでも良くなった。 だけどこのなんともやるせない 1 年間と部長という肩書きに最後にひとつ花を持たせてやりたくて、部室に残っていたこの大きいカッターマットだけ持ち帰ってきた。買ったらきっと高いこのカッターマットには、部長としてげんなりした気持ちを味わった分たくさん働いてもらわなくてはいけない。 虫部はなんだか楽しそうで羨ましかった、冷蔵庫が欲しいというのでそのまま引き渡してあげた。