墓地たち


 試乗の日の話。中古車屋というのはある程度の敷地が必要なので結構田舎にあって、これから車を買いに行くのに、車じゃないといけないようなところにあったりする。調べたところ、一番近くの駅から30分も歩かなきゃいけなくなった。

それでもまあ楽しい用事なのでせっかくだからと歩いたんだけど、携帯の地図の案内に従っていたら本当にあってるのか心配になるような田んぼの間みたいなところをそこそこの距離いかなきゃいけなくて、そもそも入って大丈夫なのかも微妙だし、靴も汚れるしでちょっと笑っちゃうくらい大変な道のりだった。

それで、やっぱり中古車屋のまわりには中古車屋がたくさんある。いろんなところから運ばれてきた運転手のいない車たちはすごく静かで、さみしいけどたしかな質量を持っていて、近くにいると圧倒されるような重たい空気を作っている。そもそも車の正面はどうしても顔に似ていて、それもなんとなく感情に訴えかけてくる感じがあると思う。

どうしようもないくらいボロボロに壊れた車が集まっているところなんかもあって、そこの横を通る時は治安の悪い場所を通るような緊張感があった。ちょっとディズニーランドのカリブの海賊とかみたいなかんじ。

途中からなんとなくそんな気がしてたけど、着いたら店員さんに、え、歩いてきたんですか!言ってくれてば迎えに行ったのに!と言われ、それはそうだよなとも思いつつ、もし頼んで断られたら恥ずかしいと思って言えなかった自分をこっそり慰めていた。そういうことはよくあります。

帰りはそうしてもらおうかなと思っていたのにその時ちょうどスタッフが足りなくて、帰りも送ってもらえずタクシーで帰ることになった。

 自分の車は写真の通りにかわいかった。結構地味だし、ひとに写真を見せても微妙な反応なんだけど、なんとなく自分ぽくていい車だと思う。色は元々の色でなく誰かが塗装したそうなのであまりひとと被らなそうだし、丸目と三菱のマークもかわいい。運転席のむかしのボタンが懐かしく見える。試乗なのでいまさっき歩いてきた細い道を運転するのかとちょっと嫌だったけど、まだナンバーがついていないので外は走れないと言われ、駐車場の中をちょっと進んでバックするだけという、正直あまりよくわからない試乗をした。古い車のエンジンの音はちょっと頼りないけど渋くていい音だった。お金もないので、なんとか当分は耐えてほしい。


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