覚悟はいいですか


 暑さもいくぶんか控えめになってきました今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。こわい話です。

 シャンプーをしているときに後ろを見てはいけないそうです。そういうときにはいろいろ寄ってきているのでなんだか良くないらしいです。目があったりするらしいです。そう言われると気になってしまいますね。

うちの実家でシャンプーをしているときに目を開けてしまうと家族のそれぞれの洗面用具がごちゃごちゃと散らばっていて、それはそれでおそろしい光景です。母親の高いシャンプーなどが高級住宅街のように並んでいる地域もあれば、錆びきった剃刀が廃墟のように放置されているのも見受けられ、世の中放置された廃墟がそこらじゅうにあるのも納得できちゃったりしますね。

忘れようとするほど思い出しちゃったりするやつでいうと、細かいことは忘れたけどトイレにまつわる血や幽霊が登場する物騒な話があって、重要なのは終わりの、この話をハタチになるまでに忘れないとあなたは死にます、という部分。

忘れないとハタチになった瞬間に死ぬのか、ハタチになる直前忘れていれば免れることができるのか、なかなか詰めの甘いところもある気がしますが、しかしこれは子どもには大きなダメージを与えます、自分もハタチの誕生日を迎えるときこの話をぼんやり思い出していた。


子供の頃、自分は小学校34年生くらいの記憶があんまりなくて、それはいいんだけど

たぶんそのあとの5年生くらいの頃のこと

放課後、友達も帰り、親が仕事から帰ってくるまでのあいだ家で一人でベイブレードをして遊んでいた。同時にふたつは回せないから自分で一つずつ入れる。お気に入りのやつをあとから入れるんだけど、判官贔屓なじぶんはあえてお気に入りの方を最初にいれて、これで勝ったらむしろ立派だ、なんて小さな物語を毎日つくって遊んでいた。ベイブレードがわからない人は調べてください。

それで楽しかったはずなんだけどある日急に、あれ、今って一体なんなんだろう、と思った。

昨日もだいたい同じようなことをしていて、特に用事がなければ明日も同じようなことをして毎日終わっていく。1年後には今日と明日の区別はつかないし、放課後一人で遊んでたことすら忘れてるかもしれない。そしたら今は一体なんのためにあって、何のためにこんなコマなんか回してるんだ、好きな漫画も見ていたテレビも、この部屋の明るさも床も壁も

いまのこの自分が未来の自分に忘れ去られてしまったら、まるで暗闇にぽっかり消えていくみたいじゃないか、と気づいて、ものすごく怖くなった。

そこで、とりあえず今日のこのことをいつまで覚えていられるのか試してみようと思って、次の日からまだ覚えてるか、まだ大丈夫と確認しはじめた。

それでいまでもたまに思い出す、夕方あの日あの部屋でコマを回していたこと、だけど選ばれたその1日以外のほとんどの自分は忘れられて、どこかに消えてしまった。

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