あの人はいま

車を買うことになった。 遡って小学校 3 年か 4 年生の時、新しい社会の先生が来た。雰囲気が悪い、という謎の理由で最初はみんなから嫌われていたんだけど、しばらく経つとわかりやすいとか実はいい人だみたいな感じですぐに人気者になった。たしかに授業はわかりやすいし性格もいい人で、自分もその人のおかげで日本の都道府県を覚えたし、その人がほかの学校に転勤してしまう時のお別れのスピーチで、僕はここにいる全員を授業で指したことがあります、と全校生徒に向かって言っていてなんだかよくわからないけどすごいなと思ってきいていた。その人は雑談も割と面白くて、テレビでアナウンサーが僕は〜〜って伸ばして言っていて怒られていた話とか、学校に来る途中の車で、親切に道を譲ってもらい、お礼のつもりでクラクションを鳴らしたら、古い車だったのですごく不細工な音が鳴り恥ずかしかったという話とかをしてくれた。話もうまかったんだと思う。 自分がたいして運転もうまくないのになんで車に乗るのがすきかというと、この歳になってやっとそういう人たちといろいろな瞬間を共有できるからなのかなと、車を買う時になって思ったという話です。